「机」や「テーブル」といえば、現代では誰もが使う当たり前のもの。
ですが、昔の日本では、これらの家具を違う呼び方で呼んでいたことをご存じでしょうか?
実は、時代によって机やテーブルの形や用途も変わり、それに伴って名前もさまざまに移り変わってきました。
本記事では、以下のことを説明していきます。
- 「机」・「テーブル」の昔の言い方について
- 「テーブル」という言葉が浸透したタイミング
当記事を読むことで、「机」、「テーブル」の代わりにどのような名称が使われていたかが分かります。
「机」・「テーブル」の昔の言い方について

昔の日本では、机やテーブルを以下のように呼んでいました。
- 「卓(たく)」
- 「文机(ふづくえ)」
- 「座机(ざづくえ)」
- 「膳(ぜん)」
- 「机案(きあん)」
順番に説明していきます。
「卓(たく)」
「卓(たく)」は、特に食事や作業に使われる台を指した言葉です。
奈良時代以前から存在し、平安時代~江戸時代にかけて広く使われるようになりました。
この「卓」は、日本由来ではなく中国の影響を受けて発展し、
- 食事用
- 作業用
- 供物用
など多くの用途で使われました。
そして、以下の種類が作られています。
- 座卓(ざたく): 座って使う低いテーブル。
- 食卓(しょくたく): 食事用の卓。
- 供物卓(くもつたく): 仏壇や神前に供え物を置くための卓。
なので、現代の「テーブル」に最も近い昔の言葉の一つといえるかもしれません。
ちなみに、「卓球(たっきゅう)」の「卓」は、この「卓」に由来した言葉でもあります。
「文机(ふづくえ)」
「文机(ふづくえ)」は、文字通り「書き物をするための机」で、日本の伝統的な小型の机です。
平安時代から使用されていたと考えられていますが、本格的に普及したのは江戸時代からです。
主に和室で使われることが多く、
- 書き物
- 読書
- 手紙を書く
などを行うときに用いられていました。
つまり、現代でいうなら、
のような用途として使われていたということです。
「座机(ざづくえ)」
座机(ざづくえ)は、文字通り「座って使う低い机」を指したもので、日本独自の家具です。
室町時代から使われ始め、江戸時代に一般的になりました。
武士、商人、庶民など幅広い階層で使われ、
- 書き物
- 学習・読書
- 食事
などで利用されていました。
現代でいう「ローテーブル」や「文机」の原型といえるかもしれません。
「膳(ぜん)」
「膳(ぜん)」は、日本独自の食文化に根付いた家具です。
飛鳥時代から存在し、奈良時代~平安時代にかけて広く使われるようになりました。
特に食事の際に使われる小型の台を指し、一人用の食事台として使用されています。
現代で一番近いのは「テーブル」です。
ただ、主に一人用として使われていたため、「一人食事用のミニテーブル」といったところでしょう。
ちなみに、「膳」には以下の種類がありました。
- 高膳(たかぜん): 高めの脚がついたもの。
- 折敷(おしき): 脚のない膳(お盆に近い)。
- 曲膳(まげぜん): 板を曲げて作られた膳。
「机案(きあん)」
「机案(きあん)」は、中国(唐)から伝わった家具で、平安時代から使用されています。
中国の「案(あん)」という家具の影響を受け、日本の生活様式に適応する形で「机案」が作られました。
神道の祭祀や供物を供える際に用いる机だったため、伝統的な行事には欠かせない道具の一つでした。
「テーブル」という言葉が浸透したタイミング

日本で「テーブル」という言葉が一般的に広まったのはいつ頃からか、解説していきます。
江戸時代以前|「テーブル」の言葉はなかった
江戸時代以前では、日本の伝統的な生活様式では、畳の上に座るのが一般的でした。
そのため、
- 「座机(ざづくえ)」
- 「文机(ふづくえ)」
- 「膳(ぜん)」
などの低い机が主流だったことから、「テーブル」に相当する家具はありませんでした。
明治時代|「テーブル」が使われ始める
明治時代になると、西洋文化が流入し、その影響から「テーブル」という言葉が使われるようになります。
そして、
- 官公庁
- 学校
- 外国人が訪れるホテル
などでは、西洋式の椅子とテーブルのスタイルが導入されるようになりました。
ただ、一般家庭では、
- 「ちゃぶ台」
- 「座卓」
が主流だったため、「テーブル」という言葉はまだ浸透していませんでした。
大正~昭和初期|都市部では「テーブル」が浸透
大正時代から昭和時代になると、都市部のモダンな家庭では、ダイニングテーブルが使われるようになりました。
そして、西洋文化に影響を受けた生活スタイルも広まり始め、「テーブル」という言葉も少しずつ浸透していきます。
ただし、多くの家庭ではまだ「ちゃぶ台」や「座卓」が中心でした。
昭和後期|「テーブル」が全国で浸透する
昭和後期になると、アメリカの影響を受けて、洋式のダイニングテーブルが急速に普及しました。
そして、1950年代~1960年代の高度経済成長期には、住宅事情が変化。
椅子とテーブルを使う生活が一般家庭にも広がるようになり、「テーブル」という言葉が広く使われるようになりました。
つまり、日本で一般的に「テーブル」が浸透したのは、昭和後期頃となります。
まとめ

今回は、「机」・「テーブル」の昔の言い方と、「テーブル」が日本に浸透したタイミングについてご紹介しました。
以下、今回の簡単なまとめになります。