「椅子(イス)」って言葉、昔の日本ではどんな名称を使って呼んでいたのだろう?
このような疑問に答えます。
本記事では、以下のことについて説明していきます。
- 「椅子(イス)」の昔の言い方について
- 「椅子(イス)」という言葉が日本で浸透したタイミング
当記事を読むことで、時代ごとの「椅子(イス)」の言い方や、その背景などが分かります。
「椅子(イス)」の昔の言い方について

昔の日本では、「椅子(イス)」を以下のように呼んでいました。
- 「倚子(いし)」
- 「腰掛(こしかけ)」
- 「床几(しょうぎ)」
- 「胡床(こしょう)」
順番に説明していきます。
「倚子(いし)」
「倚子(いし)」は、日本独自のものではなく、中国から伝わった言葉です。
「倚(い)」には「もたれる」という意味があります。
なので、「もたれて座るもの」、つまり、背もたれのあるイスを指しています。
「倚子」は中国の文化とともに日本に伝わり、平安時代から鎌倉時代にかけて、宮廷や寺院などで導入。
ただ座るだけではなく、装飾品や権威の象徴としても扱われました。
しかし、当時の日本では、基本的に「畳」や「座布団」の文化が強く根付いていました。
なのでその頃は、イス(倚子)が一般的に普及することはありませんでした。
ちなみに、「倚子」はあくまで中国の影響を受けたものであり、西洋式のイスとは異なっています。
「腰掛(こしかけ)」
「腰掛(こしかけ)」は、日本の伝統的な「座るもの」全般を指した言葉です。
つまり、
- 座るための台
- 簡易的なベンチ
- 木の切り株
など多くのものを含む広い概念といえるでしょう。
「腰掛」は日本由来の言葉であり、平安時代(8~12世紀) には、すでに貴族や僧侶が使用していました。
そして、江戸時代(17~19世紀)には、庶民の間でも広く使われ、
などを「腰掛」と呼ぶようになりました。
「床几(しょうぎ)」
「床几(しょうぎ)」は、日本における昔の折りたたみ式のイス(腰掛け)のことを指します。
日本由来の言葉で、平安時代にはすでに使われていました。
鎌倉時代(12~14世紀)から戦国時代(15~16世紀) にかけては、
として多く使用され、重宝されました。
江戸時代(17~19世紀) になると、寺社や武家屋敷の庭先などでも使われるようになりました。
ちなみに、現在も神社仏閣で「床几」が使用されることもあります。
「胡床(こしょう)」
「胡床(こしょう)」は、日本における昔の「椅子(イス)」の一種です。
ただし、現代の椅子とは異なり、折りたたみ式の簡易な腰掛けを指します。
「胡床」は中国由来の言葉で、
という意味を持っています。
日本には古代(飛鳥・奈良時代ごろ)に伝わり、武士や貴族の間で使用されました。
主に武士や貴族が屋外や戦場で使用し、特に戦国時代には重要な道具の一つとして使用されました。
ちなみに、「胡床」は現在でも神社で用いられることがあります。
「椅子(イス)」という言葉が日本で浸透したタイミング

昔は、「倚子(いし)」、「腰掛(こしかけ)」といった言葉だった「椅子(イス)」。
では、いつから「椅子」という言い方は日本で広まっていったのか?
解説していきます。
鎌倉時代|禅僧が椅子を使い始める
鎌倉時代の頃、禅宗の影響によって中国から「椅子(イス)」が再び伝来しました。
すると、日本の禅僧が「椅子」を使うようになり、
- 自然木を利用したイス
- 竹イス
などが作成されるほど流行。
「椅子(イス)」という言葉が使われるようになりました。
鎌倉・室町時代には禅宗の移入とともにいすが再び中国からもたらされ,種類も多くなり,禅僧が多くこれを用いた。
中でも曲彔(きよくろく)が流行し,自然木を利用したいすや竹いすなども作られた。
出典元:コトバンク「椅子」
しかし、これらの椅子を使ったのは僧たちだけ。
一般庶民の間では普及するには至りませんでした。
江戸時代|武士の間で椅子が使われ始める
江戸時代には、武士や一部の知識層の間では椅子が使われるようになりました。
しかし、この頃の庶民の生活様式は「畳の上での正座」が主流でした。
当時は、海外からの椅子文化が入ってきてはいましたが、「椅子」が日本全体に広まることはありませんでした。
明治時代|「イス」が日常語に
明治時代に入ると、新しい西洋のイス文化が流入してくるようになりました。
その結果、椅子の使用が一般的になり、
などで椅子と机を使うスタイルが定着していったのです。
そして、「イス」という言葉も完全に日常語となり、庶民の間でも使われるようになりました。
つまり、「椅子(イス)」という言葉が日本で浸透したタイミングは、「明治時代」になります。
まとめ

今回は、「椅子」の昔の言い方と、「椅子」が日本で浸透したタイミングについてご紹介しました。
以下、今回の簡単なまとめになります。